夫婦で共有になっている不動産の持分の売却は可能ですか
夫婦共有の不動産の持分の売却は可能です。ただ、夫婦関係を解消していないなら、持分売却にはリスクが大きくなります。
回答者:弁護士 大澤 一郎
共有持分は自由に売却できる
不動産を共有状態にしている場合、他の共有者全員の合意がない限り、不動産を売却することはできません。このことは共有者が夫婦であっても同じことです。相手の持分がどれだけ少なくても、相手の了承が必要になります。
ただし、自分一人の共有持分のみであれば、自分の単独の判断で売却することができます。共有持分に対しては、自分一人が完全に処分権を持つので、他の共有者に告げずに売却してしまうことも可能です。
共有持分を買い取ってもらえる人を探すのは大変なことが多いですが、購入者さえ見つかったら、配偶者に知られないまま持分を売却することも可能です。
夫婦関係が悪化する可能性がある
不動産の共有持分だけを売却すると、特に夫婦関係を解消していないケースではリスクが高いです。
共有持分を売却しても、そのときすぐに配偶者に持分の売却がバレることは少ないです。しかし、後に固定資産税の納付書が届いたときや不動産売却の書類を見つけられたとき、不動産の登記事項証明書を取得したときなど、いろいろな場面で共有持分の売却が相手にバレてしまうことがあります。
このとき、売却を秘密にしていたら、配偶者が驚いてトラブルになり、夫婦関係が悪化してしまうことがあります。その不動産が夫婦にとって重要な資産であれば、離婚問題につながる可能性すらあります。
持分を買い取った人が配偶者に買取を持ちかけてくる可能性がある
不動産の共有持分を売却するとき、相手を見つけるのは大変です。よく利用されるのが、共有持分買取業者と呼ばれる専門業者です。こうした業者は、持分を安く買い取って、他の共有者からも同じように持分の買取を進め、不動産全体を高く売ることによって利益を得ています。
そこで、夫婦で共有の不動産持ち分を共有持分買取業者に売却すると、業者が配偶者に対して共有持分の買取話を持ちかけてくることがあります。このとき「売却に応じないと競売にかかる」などと言われることもありますし、不当とも言えるような安い売却価格を提示してくることもあります。
すると、配偶者は、安値でも共有持分を売らなければならないのかと悩み対応に困ってしまいますが、夫婦は運命共同体ですから、結局は自分も一緒に困ってしまうことになるのです。また、こうした場合、配偶者には確実に共有持分を売却したことがバレるので、トラブルになります。
そこで、夫婦で不動産を共有している場合に自分の持分だけを売却することには慎重になる必要があります。対応に困ったときには弁護士に相談すると良いでしょう。