マンションの管理組合の理事をしています。管理費を滞納している区分所有者がいまして、既に管理費請求訴訟で勝訴判決を取得し、強制執行を試みましたが無剰余取消しとなりました。もはや回収のしようがない状態です。管理組合としては、このような区分所有者に対してはこのまま未払いの管理費が膨らむのを甘受し続けなければならないのでしょうか。
いいえ、そのようなことはありません。この場合、区分所有法59条により、所有者をマンションから追い出すために競売を申し立てることが可能です。
回答者:弁護士 大澤 一郎
区分所有法59条にもとづいた競売とは
マンションの区分所有者は、マンションの管理費用を支払う義務を負っています。しかし、中には管理費用を支払わない人がいます。このような区分所有者がいると、管理組合にとっては大きな迷惑となります。
そこで、区分所有者に対し管理費用の支払いを求めて訴訟をすることができます。判決が出たら、マンションの強制競売を申し立てることができます。また、区分所有法7条により、裁判なしで強制競売ができることもあります。
しかし、このような区分所有者は、高額な抵当権を設定していることが多く、強制競売を申し立てても、無剰余取消となってしまうことが多いです。
このようなときに利用できるのが、区分所有法59条にもとづく強制競売です。
これは、ある区分所有者が多額の管理費用を滞納するなど、他の区分所有者の利益を著しく害する場合で、競売以外の方法では障害を取り除くことができない場合に認められる強制競売です。目的は、管理費の回収ではなく、区分所有者をマンションから追い出すことです。
そこで、59条競売は、そのマンションの時価を超える抵当権が設定されていても、利用することができます。無剰余取消が行われることもありません。
滞納した管理費の回収方法
区分所有法59条にもとづく競売は、管理費用の回収が目的ではないので、これによって滞納された管理費を回収することはできません。競売代金は、抵当権者への配当金や、裁判所に支払った予納金の返還のために使われることになるためです。
そして、管理費用は、当該マンションの新所有者から回収することになります。
競売によって新しく区分所有者となった人は、全所有者が滞納していた管理費用を支払わなければならないということです(区分所有法8条)。
このようなことから、管理費用の滞納額が大きくなりすぎると、新しい買い受け人が現れにくくなります。
そこで、マンション管理費の滞納があったら、早めに請求手続きをとりましょう。方法がわからない場合には、弁護士に相談することをおすすめします。