借入がある被相続人が居住していた不動産について相続財産管理人選任の申立をして売却できた事例
事例
お母様からのご依頼でした。息子が亡くなったのだが、息子には配偶者も子供もおらず、相続人は依頼者のお母様のみでした。息子には借金の影があり、お母様としては相続放棄をすることを考えていました。息子が晩年住んでいた自宅は、土地建物共にお母様の名義でした。お母様としては、不動産を売りたいが、中のものを処分できない、滞納している借入、税金関係の対応をしっかりして欲しい、というのがご相談の契機でした。
- 解決までの道筋
- まず、相続人、プラスの財産、マイナスの財産について調査した上で、相続放棄が妥当との結論に至り、当事務所が代理して相続放棄の申立をしました。
そして、相続財産管理人選任申立をしました。
通常、相続財産管理人選任申立後の処理を進めるための費用として、申立人が同費用を裁判所に納めなければなりません。しかし今回調査段階で、故人のプラスの財産として100万円程度の預金があることが判明しましたので、これを相続財産管理人選任申立時の裁判所の費用(予納金)にあてるべきであることを主張しました。結局当方の主張が認められ、依頼者様は特に裁判所に費用を納めずに、処理を進めていただくことになりました。
申立から約1年以内に、相続財産管理人の責任と権限で不動産の内部を収去し、お母様は無事不動産を売却することができました。
解決のポイント
①賃借人が亡くなった場合の対応
不動産を貸しており、中に住んでいる人が亡くなった場合、まずは相続人を調査することになると思います。相続人が判明すれば、相続人に対し明け渡し等事後の処理を求めていくことになります。
②故人に相続人がいない場合の対応
もっとも、故人に配偶者や子供がおらず、相続人がいない、あるいは相続人が裁判所に相続放棄手続を取っている場合には、相続財産管理人の選任を裁判所に申し立て、管理人を通じて建物の明け渡しを実現してもらう方法があります。この場合の問題点は、申立に費用(予納金)がかかること、明け渡しまでに時間がかかることが挙げられます。前者の問題については本件のようにプラスの財産があれば予納金を不要とされることがありますので積極的に裁判所に働きかけることが考えられます。後者の問題については、速やかに明け渡しを実現して欲しいことを裁判所と管財人に伝えることが考えられるでしょう。
※本事案は当事務所でお取り扱いした事案ですが、関係者のプライバシー保護等に配慮し、事案の趣旨を損なわない範囲で事実関係を一部変更している箇所がございますのでご了承下さい。